以前のニュースにて、2014年は故ノーマン・マクラレン監督の生誕100年記念として、世界的に様々な催しが企画されていることをお伝えしたが、1914年はアニメーション史において重要なもう一人の人物の生誕年でもある。イギリスを代表するインディペンデント・スタジオ、ハラス&バチェラーの故ジョイ・バチェラー氏である。

バチェラー氏は、イラストレーターやアニメーターとして活動を行っていた(これは当時の女性としてはかなり珍しいことだった)1930年代後半に、ジョン・ハラス氏に声をかけられ、その後公私にわたるパートナーとなって活躍した。両者が1940年にロンドンにて設立したハラス&バチェラー社は、インディペンデント短編作品から、広告映像、長編映画まで多岐にわたる分野で活動を行い、イギリスのアニメーション史に残した功績はとても大きい。同スタジオの代表作『動物農場』(1954年、ジョン・ハラス&ジョイ・バチェラー監督)はイギリス初の長編アニメーション映画で、同作は日本でも近年、三鷹の森ジブリ美術館ライブラリーにより再公開されるなど、現在でも人気のある作品だ。同スタジオの残した成果は、現在二人の娘のヴィヴィアン・ハラス氏の運営するハラス&バチェラー・コレクションによって管理されている。

しかし、国際アニメーションフィルム協会(ASIFA)の初代会長を務めるなどしたハラス氏に比べると、バチェラー氏の功績に対しては、これまで、スポットライトが当たってきたとは言いがたい状況である。

先日終了したブラッドフォード・アニメーション・フェスティバルでは、「女性とアニメーション」というテーマのもと、現代を代表する女性作家のひとりジョアンナ・クイン監督の特集や、日本の若手女性作家の作品を集めた上映プログラムなど、いくつかの企画が組まれたが、今年生誕100年を迎えるバチェラー氏は、そのなかで大きくフィーチャーされた。

「Joy Batchelor – Centenary Celebration and Special Screening」では、彼女の功績を讃える短編ドキュメンタリーOde to Joyと、彼女がハラス&バチェラー・スタジオにおいて中心的に手がけたコマーシャルや啓蒙映画のコレクション上映に加え、バチェラー氏の娘のヴィヴィアン・ハラス氏、Ode to Joyの監督マーティン・ピックルス氏、ブリティッシュ・フィルム・インスティテュート(BFI)のアニメーション・キュレーターであるジェズ・スチュワート氏、による座談会が開催され、ハラス&バチェラー・スタジオ初期におけるバチェラー氏のイラストレーションのスタイルの影響の大きさなど、バチェラー氏の功績の重要性があらためて強調された。

2014年は『動物農場』公開60周年記念の年でもある。同作は今年、HDリマスター版が公開され、ブルーレイおよびDVDも先月リリースされた。ブラッドフォード・アニメーション・フェスティバルでのトークの際には、ハラス&バチェラー・スタジオの短編作品集のリマスターおよびソフト化も来年に予定されていることが明かされた。バチェラー氏については、ヴィヴィアン・ハラス氏が執筆した伝記A Moving Image: Joy Batchelor 1914-1991 Artist, Writer and Animatorも今年出版された。この本には、ポール・ウェルズ氏やクレア・キッソン氏など、イギリスを代表するアニメーション研究者も寄稿しており、これら一連のリリースにより、ハラス&バチェラー・スタジオおよびバチェラー氏の残した成果の再評価が、今後大きく進むことと思われる。

ハラス&バチェラー・コレクション
http://www.halasandbatchelor.co.uk/