「メディア芸術連携促進事業 連携共同事業」とは

マンガ、アニメーション、ゲームおよびメディアアートに渡るメディア芸術分野において必要とされる連携共同事業等(新領域創出、調査研究等)について、分野・領域を横断した産・学・館(官)の連携・協力により実施することで、恒常的にメディア芸術分野の文化資源の運用・展開を図ることを目的として、平成27年度から開始される事業です。

*平成27年12月1日中間報告会が国立新美術館にて行われました。
*平成28年3月13日最終報告会が京都国際マンガミュージアムにて行われました。
*平成27年度の実施報告書はページ末のリンクよりご覧いただけます。

●「アニメーションブートキャンプ2015」
森ビル株式会社

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 「アニメーションブートキャンプ2015」は次世代のアニメーション業界の中核を担う人材を育成することを目的に、産学協同ワークショップを開催している。

 「表現者として自己開発できる人材を育てる」という理念にのっとり、トップレベルのアニメーターが大学や専門学校等でアニメーションを学ぶ学生に指導を行い、小手先の技術や知識ではない、アニメーターとして成長していくうえで必要な基本姿勢をグループワークを通して学ぶワークショップとしている。

 講師から学生に一方通行的な技術のトレーニングや指導を行う従来の方法ではなく、講師と学生、あるいは学生どうしで学び合い、教え合う、双方向のコミュニケーションを中心とした教育方法を構築している。

●中間報告会レポート

 まず、事務局の森ビル株式会社出渕氏より『アニメーションブートキャンプ』の説明にあたり、三つの理念について説明された。

1) 自己開発・自己発展できる人材の育成

 アニメーションの中で一番重要な「動き」をつくる「考え方」を教え、2Dでも3Dでも応用可能な能力を育む。技術を教えることを目的化しない。

2) 観察と発見の重視

 これまでのアニメ作品におけるパターン化された演技をコピーするのではなく、自分の体を動かし、その観察に基づく表現を模索する。

3) “みんなで見る”ことの重視

 誰もが共通して持っている「動きに対するイメージ」を意識し、それをいかに表現できるかを考える。グループワークを通して、自分が描いたものが周りの人に伝わるか、みんなで表現を吟味しながら学んでいく。

 続いて『アニメーションブートキャンプ2015』に至るまでの経緯が話された。

 最初は2011年の『メディア芸術情報拠点・コンソーシアム構築事業』で実施された『アニメーター育成プログラムテストケース』から始まった企画が、2012年に合宿形式のワークショップとなって以後、毎年継続して実施されている。2013年度には、これまで学校教員の推薦で集められていた参加者の一般公募が始まり、2014年度は年一回開催が三回開催に拡大された。

 そして2015年度には高校生以上を対象とした一日間・日帰り形式のワークショップと、大学生以上を対象とした合宿形式のワークショップ、合わせて二種類のワークショップが実施されている。それら2015年度の内容について、プログラムの内容や参加講師、参加者の数や在住地域、そしてワークショップでだされた課題や成果について詳しい報告が行われた。今後は12月後半に合宿に対する講評会とスタジオ見学とが予定されると共に、2016年1月19日には報告会と意見交換会も開かれるという。

 報告後の質疑応答での「大学などで同じようなワークショップが行われるような状況になってきた中で、あえて『アニメーションブートキャンプ』を行う意義は?」という質問に対して、「『アニメーションブートキャンプ』は「教える側と教わる側」という境を越えた、双方向のコミュニケーションに基づき、表現することの根源を学び合う点が特徴となっている。また、公募を通じて大学や専門学校、時に社会人も集うことで、学校の授業や企業の研修とも異なる、第三の学びの場として拡張してきた。今後、どのような形にしていくかは、課題の一つだと思う。」と出渕氏が回答した。

●最終報告会レポート

報告者 東京藝術大学大学院 布山タルト氏

 アニメーションブートキャンプは、将来の日本のアニメーション界を担う人材(主にアニメーター)の育成方法を開発する実践的プロジェクトで、産学の垣根を越えた問題意識と知恵の共有を図ることを目指し、アニメーションプロデューサーの竹内孝次氏と東京藝術大学の布山タルト氏の共同ディレクター制により実施している。

 この事業は文化庁「メディア芸術情報拠点・コンソーシアム構築事業」の一事業として、2011年の「アニメーター育成プログラム・テストケース」を実施、2012年より「ANIMATION BOOTCAMP」として3年間継続実施されている。その間に160人以上の参加者があり、業界に就職したOB、OGも少なくない。

 アニメーションブートキャンプの理念はアニメーション分野の問題意識を背景とした以下の3つである。

  1. 自己開発・自己発展できる人材を育てる
  2. 観察することを重視する
  3. 他者に伝わる表現を目指す

 こうした理念に共感して頂いた第一線で活躍するアニメーターや監督らが講師として参加し、チームで指導に当たる点が特徴である。

 今年度「アニメーションブートキャンプ2015」のチャレンジは以下の3点である。

  1. 女性も含めた新規講師の開拓
  2. リピーターへの対応
  3. ゲーム・CG分野との連携可能性の模索、異業種も交えた意見交換会の実施

 そして本年度の実施概要としては、9月27日の京都造形芸術大学で参加数36人(男16、女20)、講師3人で一日講座を実施した。昨年度も参加したリピーターがおり、経験を活かして手伝いをしてくれることで指導がスムーズとなった。課題内容は”歩き”で、初心者の作画のサポートのためにカットアウト人形を作らせ、人形をなぞって描くようにした。歩きの作画課題のポイントは実際に歩いて観察することで、講師がさりげなくポイントを教える。また講師が実際に描いてみせ、アンケートで「上手い人の描くのを見るのが一番勉強になる」との回答を得た。講師が積極的に体を使って教えると、学生達も作画中に自然と体を動かすようになる。午後の課題は感情に沿ったオノマトペの歩きを追求してもらう。更に「みんなで見る」ことで、表現が正しく伝わるかを常に確認する。学生同士のやり取りが不十分だと講師が介入し、簡単な助言を与えると講師がいない間も自分で考えて試すようになると述べられた。

 次に11月20日〜23日に東京藝術大学那須高原研修施設で参加数15人(男5、女10)、講師7人で合宿形式により濃密な講座を開催した。指導方法は基本的には同じだが、合宿は擬似的な制作現場のようで、4日間を通じてある種の共同体が形成されている印象を受ける。ブートキャンプの3つの理念を、4日間昼夜を忘れて取り組み学ぶということが本質ではないかと思われると述べられた。

 そして、ゲーム、CGなど分野横断的な方々を集めての「報告・意見交換会」を1月19日に開催した。参加者25名の所属はアニメーション企業、ゲーム企業、教育機関、業界団体などから様々でゲーム業界の関係者からは「短期間で驚くべき成果」と予想以上に共感していただき、「人事の採用試験としての可能性を感じる」とまで言って頂いたという。

 本事業の成果として、カリキュラム、産学の人的ネットワーク、教える人材と育成方法、教え方のノウハウ、評価方向、学習理論、ツール、未来を担うアニメーターが上げられるが、これらを大学・専門学校だけでなくアニメーション業界やゲーム分野など他分野への還元も考えられるとのこと。

 今後の主な課題としては、講師の育成方法の構築、OB/OGの活用、課題評価方法の更なる検討、カリキュラムやツールの教育機関への還元、ゲーム・CG分野からの参加者への対応、参加者を増やすための広報活動など、毎年様々なアイディアがでて来ると報告された。

 これまでの実施内容は下記WEBページにて公開中である。

 アニメーションブートキャンプ

講評・質疑応答

企画委員より

  • 「昔のスタジオでは多くのアニメーターが先輩から教わっていたが、現在の海外依存や自宅での個人作業の中で、徒弟制度的に教わる場が薄くなっている。このような具体的な指導方法が確立していることは嬉しく思う。今は学生向けと限定的だが、業界へと拡張する可能性も探って頂きたい」

【実施報告書PDF】

報告書表紙画像

報告書PDFダウンロード(38.3MB)

本報告は、文化庁の委託業務として、メディア芸術コンソーシアムJVが実施した平成27年度「メディア芸術連携促進事業」の成果をとりまとめたものです。報告書の内容の全部又は一部については、私的使用又は引用等著作権法上認められた行為として、適宜の方法により出所を明示することにより、引用・転載複製を行うことが出来ます。