1997年に文化庁の主催で始められた「メディア芸術祭」は今年20年目を迎え、アート・エンターテインメント・アニメーション・マンガの4部門からなるメディア芸術の総合フェスティバルとして文化史に大きな足跡を残してきた。その歩みを振り返る企画展「変える力」が10月15日(土)から11月6日(日)まで、東京都内の「アーツ千代田3331」など四つの会場で開催された。ここでは20周年を記念したその全貌を取材し、「メディア芸術祭20周年記念展・開会式」と「アーツ千代田3331での展示・上映」、及び「NTTインターコミュニケーション・センターその他での展示・上映」についてレポートする。

●「メディア芸術祭20周年記念展・開会式」レポート

 まず「文化庁メディア芸術祭20周年記念展 変える力」の開催に先立ち、文化庁主催の開会式が10月14日に「アーツ千代田3331」2階の体育館で行われた。

 最初に本展覧会の概要が説明された後、「文化庁メディア芸術祭20周年記念展」実行委員会会長を務める宮田亮平・文化庁長官が登壇。次のように挨拶した。

 「先ほど20年の歴史を拝見し、やはりこの20年は素晴らしいと感じました。その年その年の4つの部門で受賞した作品が最大限の力を出されている。20年経つと普通は古くなるのですが、古さを感じさせないというのは、先生方・出品者の方々の作品が輝いているか、また同時に生きているということですね。生きているからこそ、その時代に合わせて光り輝いていくという感じがとても素晴らしいと感じました。ピカソが『子供のころはすべてが芸術家である。しかしそれが大人の時に芸術家として花開いているだろうか?』と言っております。私は子供であろうと大人であろうとすべてが芸術家だと思っております。ただしそれを生業にしているかどうかの違いだけです。人は必ずトキメキがあります。そのトキメキをどうやって形にして、人に伝えて行くかということをやることで違いが出てくる。その手段としてメディアがある。いわゆるメディア芸術としてアニメが、マンガが、いろいろな手段がある。そんなことを感じています。ますますこのメディア芸術祭が発展いたしますように。」


宮田亮平・文化庁長官

 その後、歴代審査委員の方々の紹介を挟んだ後、プレス内覧会にも参加した三人の招聘作家が以下のように挨拶を行った。


歴代審査委員ら出席者の方々

「このたびは文化庁から再び招聘をいただくことができ、大変うれしく思っています。20周年を記念する今回の祭典において作品を展示できることを大きな喜びと感じています。」(David BOWEN)


David Bowen氏

「13年前、私たちは初めてビデオマッピングを試み、『3 minutes²』 を展示させていただきました。12年後の今はその手法は、非常によく使われるものになっています。初めての作品を日本でお披露目できたことを、いまだに光栄に思っています。」(Electric Shadow )

「12年前に大賞をいただいた時、この作品の意図は『このインスタレーションは未来を表すものである』というものでした。12年後の今、その未来がここに来ており、この作品はいまだに生きています。本当にありがとうございました。」(Electric Shadow )


Naziha Mestaoui氏、Yacine Ait Kaci氏

 三人が拍手に包まれた後、第3回デジタルアート(インタラクティブ)部門で優秀賞を受賞した明和電機によるスペシャルパフォーマンスが行われ、メディア芸術祭20周年を祝して23年前に作られた『パチモク』が上演されて開会式は幕を閉じた。


明和電機のパフォーマンス

 同日開かれた報道機関向けの内覧会と併せて「文化庁メディア芸術祭」が積み重ねた20年の歴史が十分に感じ取れた開会式であり、翌日からの一般公開に向けて、大いに気分を盛り上げていたといえるだろう。

●「アーツ千代田3331での展示・上映」レポート

「文化庁メディア芸術祭20周年企画展 変える力」のメイン会場となる「アーツ千代田3111」は中学校の校舎を改築して作られたアートセンターで、秋葉原の一端にあることから、本展の作品を上映しているUDX THEATERにも徒歩10分ほどで向かうことができる。展示は建物正面から入った先の1階メインギャラリーで行われ、ギャラリー入り口の壁面にデザインされた20年間の受賞作品タイトルが来場者を迎えてくれる。


アーツ千代田3331入り口

 開催初日前日の10月14日(金)には報道機関向けの内覧会もこのギャラリーで行われ、最初に挨拶した文化庁文化部芸術文化課芸術文化調査官の林洋子氏は以下のように語った。
「メディア芸術祭は平成9年(1997年)に第1回を東京の新国立劇場で開催し、今年(平成28年)20周年を迎えるということで本展が特別に企画されました。『第20回メディア芸術祭』は20年を振り返るこの記念展と、来年(2017年)に受賞作品展の開催が予定されている第20回コンテストの二つに分けて開催されます。20年間の総受賞作品数は審査委員会推薦作品等も含めると約2,700点、総受賞者数は約2,400名(審査委員会推薦作品選出者等を含む)にのぼり、この企画展ではかつて審査委員を務めてくださった4名がその中から選出した、56作品の展示と90作品の上映が行われます。」


文化庁文化部芸術文化課芸術文化調査官・林洋子氏

 さらに林洋子氏は「秋葉原はメディア芸術と親和性があり、かねてより一度コラボレーションをしてみたかった。今回、満を持してアーツ千代田3331での開催となったが、周辺の電気街の協力も得て、街に飛び出して行く企画になっている」と続け、アーツ千代田3331が今回の企画展にふさわしい会場として決定されたことを付け加えた。

 メインギャラリーに入ってすぐのフロア壁面には、過去20年分の受賞作品を紹介する映像が”動く年表”として投影されていたが、内覧会では文化庁文化部芸術文化課支援推進室メディア芸術交流係研究補佐員の小林桂子氏により、この仕掛けの解説も行われた。20年間に入賞した「約2700作品すべてを展示するのは難しいため、この動く年表ではその全作品をデータベース化している。全作品が年表の動画の中で可視化され、とりわけ大賞受賞作品については大きく可視化されています」とのことで、第1回の800点の応募作品が第19回では4400点にも増えた「メディア芸術祭」の20年を、約20分で見通すことができるという。


動く年表


フォトセッション
(写真左から右に) アート部門監修者・関口敦仁氏(美術家/愛知県立芸術大学教授/元アート部門審査委員)、第13回アート部門大賞受賞者・David Bowen氏、アニメーション部門監修者・氷川竜介氏(アニメ・特撮研究家/明治大学大学院客員教授/元アニメーション部門審査員)、第8回アート部門大賞受賞者・Naziha MESTAUOI氏、第19回エンターテインメント部門新人賞受賞者・ノガミカツキ氏、第8回アート部門大賞受賞者・Yacine AITKACI氏、第18回エンターテインメント部門優秀賞受賞者・小西哲哉氏

 メインギャラリーの会場はさほど広くはないが、56作品の実物や映像記録、ないしはパネルがくまなく展示され、20年の歴史がコンパクトに圧縮されている。また展示は必ずしもアート・エンターテインメント・アニメーション・マンガの4部門ごとに分けられているわけではなく、部門を横断する以下の10のコンセプトに沿って、会場全体がゆるやかに区画されていた。

  1. 新しい情報が生み出す新しい『もの』の形」
  2. 身体と物質の再構成」
  3. これからの表現、その組み合わせ」
  4. ゲームというインタラクティブメディア」
  5. ウェブをキャンバスにした多様な表現」
  6. ユーザーの行動が表現へ」
  7. 『戦後マンガ史』以後のマンガ史へ」
  8. ポスト・インターネットの作り手たち」
  9. デジタルファブリケーションの普及」
  10. ロボットとその周辺にある表現」

 このほか地下1階の別室には、第14回アート部門優秀賞作品『10番目の感傷(点・線・面)』(クワクボリョウタ)が展示されている。LEDライトを乗せた鉄道模型の作り出す影が次々に変化する様が印象的なインタラクティブアートで、その画面イメージが第18回アニメーション部門優秀賞を受賞した劇場用長編作品『ジョバンニの島』に引用され、アートと商業アニメーションのジャンルを越えたコラボレーションがあったこともここに記しておきたい。


『10番目の感傷(点・線・面)』

 以下、会場を横断しつつ、4つの部門別に展示作品を紹介していこう。

 まずアート部門については、監修者の関口敦仁氏による以下のような解説が内覧会で行われた。
「アート部門では多様なメディアを対象に、これまでの各時代の表現を多様な形で表現している作品が選ばれました。そこには過去19回の開催を通じて、その時代の背景となった様々な記述が反映されています。とりわけ今回は『変わる力』というテーマの基、多様な技術的変化と表現の変化が作品に表出されているものがいくつかのフェーズに区分され、展示されています」。


関口敦仁氏

 その代表例として、Naziha MESTAUOI氏とYacine AITKACI氏のユニットであるElectronic Shadowのインスタレーション『3 minutes²』(第8回アート部門大賞)が会場に展示され、内覧会では来日した作者二人が「この作品は未来についてのインスタレーションでしたが、今日私たちはまさにその未来にいます。まるでタイムマシンに乗って、過去の東京から現在の東京へと旅をしてきたみたいです」とのコメントを伝えた。


Naziha MESTAUOI氏とYacine AITKACI氏

 また今回、第13回アート部門大賞を受賞したインスタレーション『growth modeling device』の作者・David BOWEN氏も内覧会に合わせて来日。タマネギという生ものを扱う作品であったため、受賞時には展示できなかった『growth modeling device』の実物を、今回ようやく展示できて「光栄に思います」と感激していた。


『growth modeling device』


David BOWEN氏

 ほかにもフナから品種改良された金魚を元のフナに戻す試みを追ったドキュメンタリー『金魚解放運動』(石橋友也・第18回アート部門審査委員会推薦作品)、スペースシャトル「チャレンジャー号」の爆発事故をモチーフとしたアニメーション作品『The Saddest Day of My Youth』(Brian AlLFRED・第15回アート部門優秀賞)やグラフィックアート『ほんの一片』(佐野友紀・第16回アート部門審査委員会推薦作品)などは関口敦仁氏が特に推した作品でもあり、再度鑑賞の機会が設けられたことを喜びたい。
さらにインスタレーション『Cycloïd-E』(Michel Michel DÉCOSTERD / André DÉCOSTERD (Cod.Act)・第14回アート部門大賞)は映像記録のみの展示ではあったが、ロボティクスという新しい技術とオペラというクラシカルな表現が、しっかり合体していると評価された作品である。

 次にエンターテインメント部門においては、伊藤ガビン氏(編集者/クリエイティブディレクター/元エンターテインメント部門審査員)の監修により、展示作品の中でゲーム作品だけを集めて一部屋が区切られていた。小林桂子氏の解説によれば「この部屋は大きな動く博物館として立体的な展示を行っています。ゲームを家庭のように楽しむ環境を美術館・博物館に備えるのは難しいことから、ゲームのパッケージとゲーム機本体を展示し、プロジェクション・マッピングによりスポットの当たったゲームの解説動画を壁面に表示しています」とのことで、それら展示作品の映像を通して、この20年間の映像表示速度の変化なども見て取ることができる。


エンターテインメント部門展示

 ゲーム以外の作品について見ていくと、内覧会に参加したノガミカツキ氏がコメントした作品が第19回エンターテインメント部門新人賞を受賞したミュージックビデオ『group_inou「EYE」』。橋本麦氏とのユニットで制作したノガミ氏はこの作品を、「ストリートビュー画像の縫い合わせの裂け目をテクノロジーのバグ、風景のバグとして展示しています」と解説していた。


ノガミカツキ氏

 また3Dプリンタによる義手開発プロジェクトのガジェット『handiii』(第18回エンターテインメント部門優秀賞)の展示について、作者の一人である小西哲哉氏は「受賞後も試作と改良を続けている」と語っていたが、関口敦仁氏によればこのようにアートとエンターテインメントが大きく交差していることを体験してもらうことも、今回の展示の意図であるという。


『handiii』


小西哲哉氏

 続いてマンガ部門では展示作品が「『戦後マンガ史』以降のマンガ史へ」と題したコーナーにまとめられ、伊藤剛氏(マンガ評論家/東京工芸大学教授/元マンガ部門審査委員)により選定・構成された、これまでの受賞作品の原画(一部複製原画)パネルが並べられていた。文化庁文化部芸術文化課支援推進室メディア芸術交流係研究補佐員の戸田康太氏はその意図を解説して、「この20年間のマンガ部門の受賞者・受賞作品や審査委員の推薦作を統計的に調べ上げて導き出した、”変化”ということの象徴的な作品を選んでいただきました。大きな枠組みとしてこの20年間は”戦後マンガ史以後のマンガ史”として見ることができるのではないか」と語っている。さらに展示作品の「『ジョジョリオン ─ジョジョの奇妙な冒険Part8─』(荒木飛呂彦・第17回マンガ部門大賞))や『あの日からのマンガ』(しりあがり寿・第15回マンガ部門優秀賞)は、2011年に発生した東日本大震災をきっかけに、マンガがメディアとしてリアルとフィクションを交錯させながらメッセージを伝えている」ことが当時、評価されたとのことであった。


マンガ部門展示

 ちなみに建物の地下1階には「マンガライブラリー」の部屋も設けられ、過去20年の審査委員会推薦作品を含む458作品全巻が時代別に展示されて、自由に読むことができたことも付け加えておきたい。


マンガライブラリー

 最後にアニメーション部門について、この企画展で上映される劇場用長編やテレビ作品は氷川竜介氏が、短編作品は土居伸彰氏(株式会社ニューディアー代表/新千歳空港国際アニメーション映画祭フェスティバル・ディレクター)が選定を行い、内覧会での氷川氏の解説によれば、「この20年間のアニメーションの変化はメディアの変化の証でもあったという。さらに氷川氏は、第1回メディア芸術祭の時にはセルに描かれフィルムで撮影されていた受賞作品が、現在では2Dと3DCGを融合したフルデジタルに変わってしまったことを例に挙げ、以下のように続けた。
「そのような理解に基づきまして、今回の展示ではいわゆる中間生成物は展示せず、上映のみを行うようにまとめています。上映も、非商業的でアーティスティック寄りの作品はこのアーツ千代田3331地下1階の上映スペースで行い、UDX THEATERでは長編の劇場作品と一部のテレビ作品を上映します。メディア芸術祭に入賞した20年分のベスト・オブ・ベストを一堂に会して見ることができるので、特にアニメーションに興味を持ち、勉強しようという学生さんには、一挙に頭に叩き込む機会として足を運んでほしい」。


氷川竜介氏

「アーツ千代田3331での展示・上映」のレポートは以上となるが、これらの展示以外に見逃せないものとして、この企画展のガイドブック「TOKYOメディア芸術オフィシャルガイド」が会場で販売されていたことを最後に報告しておきたい。20年分の受賞作品や審査委員推薦作品が受賞年単位や個別に紹介された資料性の高い作りで、メディア芸術関連施設など多彩なデータも満載されているだけに、今後メディア芸術祭に足を運んだ折にはぜひ入手していただきたい。

●「NTTインターコミュニケーション・センター、その他の会場での展示・上映」レポート

 「文化庁メディア芸術祭20周年企画展―変える力」は東京・千代田区のアーツ千代田3331をメイン会場として、他に新宿区のNTTインターコミュニケーション・センター(ICC)、千代田区のUDX THEATERと千代田区立日比谷図書館文化館、港区の国立新美術館の4つのサテライト会場で開催された。

ICCでは「New Style New Artist ─アーティストたちの新たな流儀」と題した4組のアーティストの展示が行われ、またUDX THEATERではアニメーションとアート、エンターテインメントの三つの部門の映像作品を上映。さらに国立新美術館ではメディアアートを、千代田区立日比谷図書館文化館ではマンガをテーマにしたシンポジウムが行われている。このように各会場の役割はそれぞれ異なり、ここではアーツ千代田3331に次ぐ規模となった、ICCでの展示内容を見ていくことにしよう。

 ICC5階のギャラリーAで展示が行われた「New Style New Artist ─アーティストたちの新たな流儀」のコンセプトは、開催プログラムの記述によれば以下のようなものである。
「近年のメディアーティストたちの活動スタイルは、新たな方法論を確立していることが見て取れます。アート、デザイン、エンターテインメントを自在に横断し、時にはクライアントワークを、時にはアート領域での表現活動をしています。また、個人ではなく、仲間たちとプロダクションを設立し活動しているのも特徴です。(中略)そうした作り手たちを『新たな表現の流儀』を持つアーティストとして捉え、その作品群をピックアップして紹介します」。

 また開催三日後の10月18日(火)には同センター4階の特設会場で報道機関向けの内覧会が開かれたが、最初に挨拶に立った文化庁文化部芸術文化課芸術文化調査官の林洋子氏は、アーツ千代田3331での展示がアーカイブ的なものであるのに対して、ICCでは「その後につながっていくような、新世代の作家によるチャレンジングな展示を試みています」と語っている。

 さらにICCの出展者たちがどのように選ばれたかについて、林洋子氏に続いて挨拶したアート部門監修者の関口敦仁氏(美術家/愛知県立芸術大学教授/元アート部門審査委員)は、以下のように述べた。
「今、メディアアートの中で、どのような形でアーティストの活動が進んでいるのか、あるいは実際に根付いてきているのか、またそれがどういう方向に向かっているのかということを考えると、そういうみなさんはこれまでいろいろな活動をされ、会社や事務所を立ち上げられてからすでに10年が経っている。それで10年経っても表現の中で若手として見られるところはあるんですが、一方で自分たちでテーマを持って、新しい展開をしようとしているところが特徴的だと思い、4組の方々に声を掛けさせていただきました。作品を見るとあきらかにそれぞれの立ち位置が違い、方向性が違うので、それがどういう方向に向いているのか、じっくり感じていただける展覧会になったかと思います」。

 こうして選ばれたアーティストがplaplax、WOW、Takram、ライゾマティクスの4組であり、4つの区画に分けられた会場で、それぞれの流儀をテクノロジーを駆使して公開していた。


内覧会でのフォトセッション。左からWOW(森脇大輔氏・工藤薫氏)、アート部門監修・関口敦仁氏、plaplax(近藤基氏)、Takram(緒方壽人氏)

 それでは内覧会における3組のメンバー(都合によりライゾマティクスは欠席)からのプレゼンテーションを引用しつつ、それぞれの展示内容を順に紹介していこう。

 まずギャラリー入り口から入った左手前はTakramの区画で、ハードウェアとソフトウェアを駆使した以下の7点が展示されている。

 『Theodolite』はビッグデータをビジュアライズするソフトウェアで、CGで視覚化された映像がiPadの操作により壁面に投影される。

 『On The Fly』はテーブル形のインターフェース。紙のカードを置くと、そのカードに様々な映像や文字が投影されて浮かび上がる。

 『Focus I/O』は視聴覚インスタレーション。置かれたカメラのレンズを通して画像のピンボケ具合が解析され、音に変換される。

 『Moon Exploration Rover』は月面ローバーのモデルで、デザインのコンセプトを伝える動画に連動してローバーが回転する。

 『Omotenashi Mask』は英語を日本人に聞き取りやすい英語に変換するソフトウェア。人型パネルに投影された人物の映像に合わせて音声が再生される。

 『Playful Hands』は子供向けの電動義手プロジェクト。ボールを近づけると勝手につかむものなど、三つの義手が並んでいる。

 『With Or Without Color』はボタン操作で二つのライトが切り替わり、部屋全体をグレースケールとカラフルな色彩とに変化させる。

 これらの作品について、Takram・緒方壽人氏は以下の通り説明している。「Takramは正式にはTakram Design Engineeringという社名ですが、東京とロンドンをベースにしたクリエイティブ・ファームで、50名ほどの規模でいろいろなプロジェクトに取り組んでいます。デザインとエンジニアリングを区別せず、その両方を行き来しながら、ソフトウェアからハードウェアまで様々なプロジェクトを手掛けている。今年9月には、ロンドンで開催されたデザインフェアの中で『Scenes Unseen』という展覧会を行いましたが、この時の展示作品の中から7つを出展させていただくことになりました。デザインとアートの領域がますます曖昧になっていく中、メディアアートというテーマの下で展示できることを光栄に思っています」。

Takram展示

 続いてギャラリー右手前がライゾマティクスの区画で、設置された大型スクリーンで過去の作品の映像が順に上映されると共に、以下の8作品の映像を映すモニターと使用されたデバイスとがセットで展示されていた。

『particles』(2011年・真鍋大度/石橋素)
『points』(2010年・真鍋大度/石橋素(4nchor5 La6))
『Nike Music Shoe』(2010年・伊藤直樹/Frank HAHN)
『the Way Sensing Go +』(2009年・the Way Sensing Go + 制作チーム(代表:真鍋大度))
『Face visualizer, instrument, and copy』(2009年・真鍋大度)
『Perfume World Tour 2nd』(2013年・MIKIKO/Rhizomatiks/中田ヤスタカ/TAKCOM/三田真一/櫻井利彦/evala)
『Perfumeライブ SXSW 2015』(2015年・Perfume/MIKIKO/中田ヤスタカ/真鍋大度/花井裕也/石橋素/堀井哲史/菅野薫)
『YASKAWA × Rhizomatiks × ELEVENPLAY』(2015年・真鍋大度/MIKIKO/石橋素)


ライゾマティクス展示

 またギャラリー左奥に展示された『KAGE 2016』は、plaplaxの作品。床にたくさん置かれたカラフルなコーンに触れると、その影が形を変えたり、飛んでいったり、色がついたりと様々に変化する。コーンの影はいずれも映像で作られた偽物だが、この映像自体を一瞬消すことで、本物の影が部屋の照明により映し出されるといった仕掛けも施されている。この作品について、plaplax・近森基氏は次のように説明した。「会場では、第1回デジタルアート(インタラクティブ)部門大賞作品の『KAGE』を改めて作り直した『KAGE 2016』を展示しています。第1回の大賞受賞時はまだplaplaxという会社ではなく、自分個人のアートワークでしたが、基本的にはアーティストとしての軸足を持ち、そこからインタラクティブなアートワークをどのように展開していこうかと考えて取り組んできました。今回は関口氏からの強い要望もあって『KAGE』のコーンを3倍くらい大きくし、面積も4倍ほどに大きくしています。かねてから構想はあった大型化でしたが、この機会に実現することができました」。


plaplax展示

 そして『Tokyo Light Odyssey』と名付けられたWOWの作品はギャラリー右奥に展示され、二つの仕掛けで映像が体験できるようになっている。一つは直径6メートルのドーム型スクリーンを設置し、そこに投影された映像を床のクッションに寝ながら見上げて、プラネタリウムのように鑑賞するもの。もう一つはヘッドマウントディスプレイを装着して全天球の体験ができるもので、こちらは一度に一人ずつ、同じ映像を鑑賞することになる。この作品について、WOW・工藤薫氏と森脇大輔氏は次のように説明している。「WOWは東京と仙台とロンドンに拠点を置く、来年でちょうど20年目を迎えるビジュアルデザインスタジオです。CM等の広告や展示スペースのインスタレーションなど幅広く映像を制作し、表現についてもフルCGを用いたり、分野の壁を越えて様々なプロジェクトに関わっています。ただ変わらずに目指しているのは、技術的な側面を含めて時代性を反映させながらも、自分たちの活動の根幹となる映像表現を持ち、常に新しい体験や価値観を追究する姿勢を貫くこと。今回発表する新作のインスタレーションは東京の様々な象徴的なシーンを映像のモチーフにした、体験型の全天球モーショングラフィックス作品です」。

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WOW展示

 ほかにも都内の様々な場所を中心に連携・協賛企画が会場以外の施設で催され、メディア芸術祭20年の歴史を23日間で一気に駆け抜ける記念展は幕を閉じた。「文化庁メディア芸術祭20周年企画展―変える力」はこうして文字通り20周年にふさわしい規模で展開され、メディア芸術祭の新たなスタートを告げたことを最後に報告しておこう。