2014年9月4日から8日にかけて、アルス・エレクトロニカ・フェスティバル(Ars Electronica Festival)がオーストリア・リンツで開催された。このフェスティバルは1979年から続く歴史を持ち、メディアアートの最先端として毎年アート、テクノロジーそして社会にまたがる表現を取り扱っている。

今年、フェスティバルが掲げたテーマは「C … what it takes to change」。社会的なイノベーションを生むために条件や変化について考察するものである。特にアルス・エレクトロニカでは触媒(Catalyst)としてのアートの力に注目し、アーティストおよびそれを取り巻く人々の力を掛け合わせることでイノベーションに挑むという新しいアプローチを提唱している。

筆者もこれまで作品出展という立場で数回参加した経験があるが、今回のフェスティバルでは新たな企画「Future Innovators Summit」に招待参加した。今年のフェスティバルのコア企画の一つとして位置づけられていたこのイベントは、公募および推薦によって世界中から集められた24名の若手の「Future Innovator」が参加し、グループに分かれて個別の課題に対する答えを導くワークショップである。イノベーターは、アーティストのみならず、科学者、エンジニア、デザイナー、ミュージシャン、起業家、発明家など多岐にわたる分野から選ばれ、国籍も多様性に富む選定がなされた(日本からは、筆者の他に、和田永氏、森翔太氏、白久レイエス樹氏が参加)。また、石井裕氏やゴラン・レヴィン氏など、既に先駆的な活動を行っている先達たちがFuture Innovatorのメンターとして、その経験を伝える役割を担った。

このイベントの主会場は、夏休み期間中の中学校。そのほか、ショッピングモールや銀行など街中が「会場」となって繰り広げられた。具体的には、各参加者の活動に関するプレゼンテーション、作品展示、メンターとの対話・議論、そしてグループワークとしての問題設定および解決のためのアイディアを導くワークショップなど盛りだくさんのメニューが進行する。そのプロセスは全てオープンな環境で行われ、フェスティバル参加者は自由にその様子や制作物を見ることができる。最終的には、各グループが2日間かけて紡いだ、各々の問題に対する「答え」をプレゼンテーションし、共有する。その様子はウェブアーカイブにて見ることができる。

アルス・エレクトロニカは常に従来の枠組みを壊し、新たな試行錯誤を続けている。社会におけるメディアアートの新たな役割を創り出す場として次の展開に注目したい。

アルス・エレクトロニカ 2014
http://www.aec.at/c/en/

Future Innovators Summit
http://www.aec.at/c/en/future-innovators-summit/