スズキユウリ氏の個展「スズキユウリ “Playing with Sound”」がポーラ ミュージアム アネックスで2014年9月23日まで開催中だ。今回の展覧会のテーマは「音と遊ぶ」。どの作品も親しみやすく子供から大人まで楽しめる。

スズキ氏はサウンドアーティスト/デザイナー。1980年生まれでロンドン在住。明和電機で5年間のアシスタントを経たのち、ロンドンのロイヤル・カレッジ・オブ・アート(Royal College of Art、通称RCA)を卒業。「音楽とテクノロジー」をテーマに作品制作を行っている。

私たちは普段、録音された楽曲を聞くという形で音楽に接することが多い。歌を歌ったり楽器を演奏したりという機会もあるだろうが、それも楽曲がベースになっているのが普通だ。楽器を自作するという人は稀だろう。しかし、振り返ってみれば、誰しも子供の頃には、そこら中のものを叩いて音を出したり、瓶に口をつけて笛代わりにしたり、山びこで遊んだりしたことがあるはずだ。童心に返って「音で遊ぶ」ことの楽しさをこの展覧会は思い起こさせてくれる。

会場には4つの作品とアーカイブ映像が展示されている。

《Looks Like Music》(2013年)は、ペンで描いた絵の上を走りながら音を奏でるミニカーを用いたインスタレーション作品。手に取れるほどの大きさの白いミニカーは、ペンで描いた黒い線をトレースして走る。線を横切るようにカラーペンで色を描くと、その色が音に変換される。色を描く位置と種類を工夫すると、様々な音楽を奏でることができる。ミニカーは数種類あり、それぞれ発する音が異なる。会場には大きな紙がセットされており、複数のミニカーを同時に鳴らすこともできる。もともとは難読症の人のためにデザインされたプロジェクトで、楽譜というフォーマットではなく、色やコンポジションから音楽を創造するというコンセプトで制作された。

《Garden of Russolo》(2013年)はインタラクティブなサウンドインスタレーション。4本の脚が生えた木の箱にラッパ型の拡声器がついたような形状のものが5種類ある。観客がラッパの部分に声を吹き込むと、異なる音になって返ってくる。ハンドルを回すとレコードの回転数が変わったかのように音の高さが変わったり、逆転再生されたり、なかにはどんな音でも音楽(リップス・インク(Lipps, Inc.)の「ファンキータウン」(1979年)の一節)に変わってしまうというものもある。この作品はタイトルにある通り、イタリア未来派のルイージ・ルッソロ氏(1885-1947)が発明したイントナルモーリ(Intonarumori)を参考にしており、装置の形状もそれに似せて作られている(イントナルモーリは機械のようなノイズを発する楽器で、ルッソロ氏が唱える「騒音芸術」のために作られた)。

《The Sound of the earth》(2009年-2012年)は地球儀の形をした球体状のレコードとプレイヤー。レコードには作者が4年間にわたって世界各地で収集した音(民族音楽、国歌、ポピュラーミュージック、放送音声)がその国のある場所に刻まれている。北半球から南半球まで30分で世界旅行ができるというコンセプトだ。海の部分は無音になっている。ちなみに北極にも音が入っていないので、最初の2分ほどは無音が続く。2013年アルスエレクトロニカで栄誉賞(Honorary Mention)を受賞。会場では展示のみで再生はされていないが、インターネット上で全音源を聞くことができる

《OTOTO》(2014年)はすぐに遊べるオールインワン音楽発明キット。OTOTOを使えば、電気の通るもの、例えば、野菜、果物、コップに入った水、金属でできた台所用品などがすべてドラムや鍵盤代わりになる。段ボールや紙、アルミホイルなどを使って手作りの楽器をつくることもできる。OTOTOは、スズキ氏、Mark McKeague氏、Joseph Please氏が結成したDentakuという会社から発売されている。一番簡単なセットは60英ポンド。単音のシンセサイザーとサンプラーを内蔵しており、MIDIコントローラとしても使用可能。12個(1オクターブ)のタッチセンサー入力、音高、音量、音色をコントロールするための4つのセンサー入力、MicroUSB端子、128Mbitフラッシュメモリ、オーディオ出力端子、内蔵スピーカー、バッテリーもしくはUSBからの電源供給という仕様。7種類のセンサー(光センサー、感圧センサー、ブレスセンサーなど)も用意されている。電子工作やソフトウェアプログラミングの知識がなくても、日常の様々なものを使って「音楽を発明」することができる。

スズキ氏は、2014年9月28日までトーキョーワンダーサイト本郷にて開催されている「未知なる日常」展にも参加している。本展覧会は、CCC(静岡市クリエーター支援センター)に巡回予定(2014年11月28日から12月27日)。

スズキユウリ “Playing with Sound”
http://www.po-holdings.co.jp/m-annex/exhibition/index.html
YURI SUZUKI
http://yurisuzuki.com/
Ototo Kickstarter
https://www.youtube.com/watch?v=pQbJhq6Gmls
Ototo meets ECAL – A workshop with Mark McKeague (Dentaku)
http://vimeo.com/85903928