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コンペティション受賞者と審査員の記念撮影

 

昨年(2015年)10月31日から11月3日にかけて開催された「千歳空港国際アニメーション映画祭2015」は「若いアニメーション作家が世界に羽ばたく機会を提供するという直接的な目的とともに、アニメーションという世界共通の文化を通じて国際交流を深め、より多くの国々から人が集うことで、北海道に貢献する」という主旨の元、北海道・新千歳空港で行われた国際的なアニメーション・フェスティバルである。2014年に続く二度目の開催であり、商業作品からインディペンデント作品まで網羅したプログラムは、実に多彩かつ注目に値するものであった。年を跨いでしまったものの、第3回に向けての案内状とする意味も込めて、ここに取材の成果を報告させていただきたい。

当日は、広大な滑走路を望む新千歳空港の国内線側ターミナルビルが会場に使われ、メインとなる上映はその4階、「じゃがポックルシアター」の三つのスクリーンをフルに使って行われた。また3階の「イベントホール翔」では「アニメーション・ワークショップ」が開催され、2階には展示やステージイベントのための「センタープラザ」。またセミナーやレセプションを開く特設会場も4階に設けられていた。

会場以外は1〜2階フロアが空港の発着ロビーで、ビル内にはほかに北海道の特産品を扱う市場や食堂、加えて土産物販売フロアや温泉まである充実ぶり。ゲストとして招かれた監督やクリエイターは、同じくビル内にあるホテルに滞在して映画祭に参加していた。これだけでも空港ならではの設備を活かした、ユニークな映画祭であることがわかってもらえるだろう。

●メイン・プログラムは七つのコンペティション

 

映画祭のメイン・プログラムとなるコンペティションは、四つの「インターナショナル コンペティション」と子供向け作品を集めた「インターナショナル コンペティション ファミリー」のほか、今年から「ミュージック アニメーション コンペティション」と「日本コンペティション」が新たに加わり、四日間に渡って上映と審査が行われた。

まず「インターナショナル コンペティション」だが、こちらは59の国と地域から1,103作品もの応募があり、その中から選ばれた18ヶ国、51の短編作品が公開審査の対象として上映された。

この数を国内の他の映画祭と比較してみると、国際アニメーションフェスティバルとしてもっとも歴史のある「広島国際アニメーションフェスティバル」では、2014年の第15回大会(五日間開催)において74の国と地域からコンペティションに応募があり、2,217作品の中から59作品が選出された。また2016年からリニューアルされる「東京国際アニメアワードフェスティバル」では、昨年の開催(四日間)において長編13作品、短編504作品の応募があり、長編5作品、短編30作品がノミネートされている。

「広島国際アニメーションフェスティバル」は、ASHIFA JAPAN(国際アニメーションフィルム協会日本支部)が共催しており、コンペティションに入賞すればアカデミー賞候補の資格が得られることから応募数が最多なのは当然としても、「新千歳空港国際アニメーション映画祭」も規模からいえば、それに次ぐものとなっているといえよう。

また「ミュージック アニメーション コンペティション」は、PV(プロモーションビデオ)がアニメーションの一分野としてカテゴライズされていたことが目新しく、一方「日本コンペティション」は日本作品が一つに集められたことによって、その水準や海外作品との違いがより確認しやすくなっていた。これはタイプの異なる作品を同列に審査することによって起こる問題に対して、配慮がなされた結果とも言えよう。

さらに、このほか組まれた「アジアパノラマ」と二つの「海外パノラマ」のプログラムではコンペティション選外の優秀作を見ることができ、豊富なバラエティという点でも国際フェスティバルと呼ぶにふさわしいものであった。

●劇場作品の”爆音上映”と多彩なインディペンデント作品のラインナップ

 

そしてこの映画祭のもう一つの目玉となっていたのが”爆音上映”で、招待作品の『イノセンス』『ロジャー・ラビット』『イエローサブマリン』『スチームボーイ』の映画四本を、コンサート並みの音響設備を備えて上映。さらに政岡憲三の『桃太郎海の神兵』、『くもとちゅうりっぷ』のような名作や、大島渚監督の異色作『忍者武芸帳』といった貴重な作品も、35mmの上映設備を生かして上映されていた。

そればかりでなくギレルモ・デル・トロ製作の『ブック・オブ・ライフ 〜マノロの数奇な冒険〜』がDVDリリースを記念して上映されたほか、国別でラトビアの『ロックス・イン・マイ・ポケット』、韓国の『クリアラー・ザン・ユー・シンク』、さらにカートゥーン・ネットワークのテレビシリーズをまとめた『オーバー・ザ・ガーデン・ウォール』といった招待作品が海外長編としてスクリーンにかけられ、いずれも字幕付きで鑑賞できる貴重な機会となっていた。

これらのラインナップに加えて『機動戦士ガンダムTHE ORIGIN』『劇場版 泣き虫ペダル』『劇場版 進撃の巨人』『花とアリス殺人事件』と揃えられた話題作の上映が一般客の人気を集め、インディペンデント系の国内作品を紹介するプログラムも「アニメーション・ミュージック・ビデオ名作選」、「北海道現代アニメーション総進撃」、「国内学生アニメーションの祭典〜ICAFセレクション」、そして庵野秀明が広くアニメーターに呼びかけてネットで公開された自主制作短編集「日本アニメ(ーター)見本市」と多岐に渡ったうえ、内容も濃すぎるほど。

ほかにも、国を超えネットでつながったインディペンデント作家どうしの集団「レイト・ナイト・ワーク・クラブ」から二人を招いてのレクチャーと、Webで発信されたオムニバス作品『ゴースト・ストーリーズ』の上映、そして日本の「CGアニメコンテスト」の流れを受け継いだ、「台湾アニカップ」の上映作品のベストセレクション公開など、先進的な企画もふんだんに盛り込まれていたことを伝えておきたい。

●特別プログラム「アニメーションマスタークラス」の圧巻

 

イベントとしてはほかに、アニメーション制作を体験できるワークショップも「イベントホール翔」にて無料で開催。東京藝術大学大学院教授の布山タルトによって創案された四つのコーナーでは、「こまこまテーブル」「ぱたぱたフライヤー」「ころころカート」「くるくるリーダー」と名付けられた制作体験ツールによって、アニメーションが楽しく手作りできるようになっていた。このコーナーは親子連れにとりわけ好評を博し、昨年体験した親子が今年も訪れているという。

また作家にスポットを当てた作品の特集上映と、本人によるレクチャーも充実していて、粘土(クレイ)アニメーション作家として知られるアダム・エリオット(オーストラリア)、東京藝術大学大学院教授の山村浩二など国際的に著名なクリエイターのためのプログラムが組まれたばかりでなく、コンペティション国際審査員による特別プログラム「アニメーションマスタークラス」も、好評をもって迎えられた。

四つ設けられた「アニメーションマスタークラス」はまず、前年のコンペティションで国内初のグランプリを受賞した日本のひらのりょうと、韓国のアニメーション監督、チャン・ヒョンユンの特集が、作品上映と本人によるセミナーの形で。またオランダ国際アニメーション映画祭(HAFF)で受賞したベスト作品の上映が、映画祭ディレクターのゲルベン・シェルメルによるトーク付きで、さらにアメリカのアニメーション研究者、アミド・アミディが厳選したカートゥーン・アニメーションの上映が本人によるセミナーと共に、それぞれこの映画祭ならではの企画として催された。

そればかりか「プロフェッショナルトーク」と題して、より深くアニメーションを語るセミナーも特設会場で行われ、ゲルベン・シェルメルによる現代中国アニメーションの報告、山村浩二によるアニメーションを作るうえでの哲学講義、加えて評論家の石岡良治によるアニメーションと音楽についてのレクチャーなどなど、トークといえどもこの充実ぶり。どれもがかなり高度な内容で、観客にもアニメーションに対する深い知識と、リテラシーとを要求するものであった。

●北海道から世界へ。地元の底力が実現させた国際フェア

 

このように「新千歳空港国際アニメーション映画祭」は、アニメーションを日本と海外、アートとビジネス、現在と過去、そして作り手と受け手という、対極的な面から多角的に見渡すことができるプログラムに満ちあふれていた。会場には人気のボーカロイドソフト「初音ミク」の展示もあり、このソフトを制作したクリプトン・フューチャーが地元企業であるように、「新千歳空港国際アニメーション映画祭」を実現させ、さらに成功に導いたのは、この北海道発の”カルチャー”の底力であったかもしれない。

なおこの映画祭のネックとして、開催された北海道への距離を挙げる人もいるかもしれないが、LCC(格安航空会社)の利用や旅行会社による宿泊とのパックツアーなど、旅費を抑える選択肢も今は少なくない。さらに開催当日のプログラムも日替りでそれぞれ複数回上映が行われるため、開催期間全日の参加でなくても上映が追えるようになっていることも利点だろう。加えて細かい注意点ではあるけれども、空港ビル内の店舗は22時にはほぼ閉店し、23時以降は空港自体に出入りできなくなってしまう。だから日ごとの最終上映の後で飲食をしたい場合は、千歳線で南千歳駅の西隣の千歳駅周辺に宿泊すれば店が見つかるだろう。千歳線は南千歳駅から新千歳空港に乗り入れているので、この手を使えば「新千歳空港国際アニメーション映画祭」もその前後の北海道観光も、必ず存分に楽しめるはずである。

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イベントホール入口風景

開催期間 2015年10月31日(土)〜11月3日(火)

会場 北海道・新千歳空港ターミナルビル(じゃがポックルシアター、センタープラザ、イベントホール翔、他)

http://airport-anifes.jp/

●コンペティション受賞作品

http://airport-anifes.jp/competition/awards/

 

グランプリ「Teeth」 監督・Tom Brown、Faniel Gray(ハンガリー、アメリカ、イギリス) https://vimeo.com/114157229

 

日本グランプリ「ズドラーストヴィチェ」監督・幸洋子(日本)

https://vimeo.com/141249193

 

新人賞「トゥー・フレンズ」Deux Amis、監督・Natalia Chernysheva(フランス)

https://vimeo.com/112306427

 

ベストミュージックアニメーション「Royal Blood”Out of the Black”」監督・David Wilson,Christy Karacas(アメリカ、イギリス) https://www.youtube.com/watch?v=bSdtvfBQd6c

 

観光庁長官賞「ドント・ハグ・ミー・アイム スケアード4」監督・Becky Solan and Joseph Pelling(イギリス) https://www.youtube.com/watch?v=G9FGgwCQ22w

 

外務大臣賞「おじいちゃんの桜の木」監督・Olga and Tatiana Pliektova(ロシア)

https://www.youtube.com/watch?v=c3yZjNRxnGA

 

観客賞「World of Tomorrow」監督・Don Hertzfeldt(アメリカ)

https://www.youtube.com/watch?v=XdV1uFwtCpo

 

キッズ賞「ステムズ Stems」監督・Ainslie Henderson(イギリス)

https://vimeo.com/131547587

 

ISHIYA賞「キューピッドのセレナーデ Cupid’s Serenade」監督・Jeca Martinez(フィリピン) https://www.youtube.com/watch?v=pMFLMCf59SQ

 

サッポロビール賞「My Home」監督・Pfuong Mai Nguyen(フランス)

https://vimeo.com/110398088

 

北海道コカ・コーラ賞「不夜城アンアミン」監督・若井麻奈美(日本)

https://www.youtube.com/watch?v=hgC9OkAufDE

 

よつ葉乳業賞「きつね憑き」監督・佐藤美代(日本)

https://www.youtube.com/watch?v=wV5XIA_ASH0

 

ロイズ賞「りんごごりんご〜おかえりわたし〜」監督・田島かおり(日本)

https://www.youtube.com/watch?v=7TAGFlC36h8