「メディア芸術連携促進事業 連携共同事業」とは

マンガ、アニメーション、ゲームおよびメディアアートに渡るメディア芸術分野において必要とされる連携共同事業等(新領域創出、調査研究等)について、分野・領域を横断した産・学・館(官)の連携・協力により実施することで、恒常的にメディア芸術分野の文化資源の運用・展開を図ることを目的として、平成27年度から開始される事業です。

*平成27年12月1日中間報告会が国立新美術館にて行われました。
*平成28年3月13日最終報告会が京都国際マンガミュージアムにて行われました。
*平成27年度の実施報告書はページ末のリンクよりご覧いただけます。

●「平成27年 ゲームアーカイブ所蔵館連携に関わる調査事業」
立命館大学ゲーム研究センター

 この事業は立命館大学ゲーム研究センターや国立国会図書館、アメリカのスタンフォード大学図書館といった国内外のゲーム所蔵施設が連携し、連絡協議会の発足や総合所蔵目録の作成を行うことを目標として調査を行うものである。「国内のゲーム所蔵概況調査」や「所蔵館目録のひも付け作業」も含めて展開は多岐に渡り、海外も視野に入れた広範囲な調査活動が行われている。

●中間報告会レポート

 報告者の立命館大学グローバル・イノベーション研究機構専門員の福田一史氏はこの事業について、国内外のゲーム所蔵施設が連携するための「連絡協議会の組織化」を挙げ、さらに「メディア芸術データベースでこれまで構築してきたアーカイブを利用して、所蔵館の目録のひも付けなどの連携業務をやろうということです」と説明。さらに「国内のゲーム所蔵館連絡協議会準備活動としては、そもそもそれ自体が組織化されているわけではないので、今年度は準備会合を実施するという形で進めていこうと思っております」と語った。組織化を進める対象となる大学などは「ゲーム所蔵がそれなりの規模であると想定される所、もしくはゲーム研究に力を入れている教育機関など」であるという。

 それら対象となる図書館や大学などに対して、ゲーム所蔵状況の調査や協議会への参加打診の打ち合わせを行っていく一方、連絡協議会の中でゲームの保存方法に関する方法論の共有やデータベースの仕様に関する検討、各種の情報交換なども行っていくとのこと。そしてそれらを「2016年の1月中旬をめどに東京で実施したいと思っており、事前協議の日程や会場候補を絞り込む形で調整を始めているところ」と述べられた。

 さらに任天堂などのメーカーによる日本のゲームが国際的にも強い影響力を持っていることから、すでにカナダのコンコルディア大学など、海外でゲームの所蔵を進めている機関もあり、「国外の事情を調査するということに止まらず、海外の所属館を対象とした連絡協議会を組織化することも併せて進めていきたいと思っております」とのことであった。対象となるそれら機関の中にはニューヨーク大学のゲーム(研究)センターや世界最大級の遊戯博物館である The Strong National Museum of Play、またイギリスのナショナル・ビデオゲーム・アーカイブや韓国チェジュ島のNexon Computer Museumなどもあり、世界規模で調査を進めているとのこと。

 また全国の関係機関に質問票を送る形で、国内のゲーム所蔵概況調査も進めていることが伝えられ、「現時点までに150以上の質問票の返送がありました。この集計や分析は1月中旬の準備会合までに行いたい」としている。加えて現時点で国立国会図書館、明治大学、ライプツィヒ大学の所蔵目録の一部を入手し、その相互のひも付けや準備作業を実施していることも報告され、「そのほかの所蔵館についてもひも付け作業は進めていきたいと思いますが、そのあたりは準備会合の結果を受けて行っていくことになると考えております」と述べられた。

 最後に事業の中心となる調査活動について、全体的に進捗のめどが立ってきたことが伝えられ、国際的な連携についても想定以上に進展が見えてきたのに対して、契約時期の遅れの関係で、スケジュール全体としてはやや遅れ気味であるとして報告が締めくくられた。

 その後の質疑応答はなかったが、企画委員から「海外の事例が日本側にとってどれだけ参照できるのかということを報告書にまとめてもらえると、来年度以降の道筋がつけやすくなると思う」との提言が福田氏に伝えられた。

●最終報告会レポート

報告者 立命館大学立命館グローバル・イノベーション研究機構 福田一史氏

 本稿では、本報告会での立命館大学ゲーム研究センターにより推進された事業である「平成27年 ゲームアーカイブ所蔵館連携に関わる調査事業」の報告についてレポートする。

ビデオゲームが「世界中に広く普及し、文化的・社会的影響力を強く有するデジタルゲームの多くが保存の対象となっておらず、劣化・散逸の危機に瀕している(注1)」と認識されていることを踏まえ、所蔵館ネットワーキングの強化を本事業の主目的として提起した。

 そのための具体的な活動として「ゲーム所蔵館連絡協議会の組織化準備業務と所蔵目録調査を実施」することにより活動を推進しようというものだという。また、日本製のデジタルゲームが海外に対しても強い影響力を有していること、保存が進んでいることを踏まえ、ここでの対象は国内の所蔵機関のみならず、海外の所蔵機関も含むものとしているという。

・ゲーム所蔵館連絡協議会準備活動

 国内のゲーム所蔵館連絡協議会準備活動としては、東京工科大学、国立国会図書館、明治大学、ゲーム博物館、ハウステンボスのゲームミュージアムなどの現地調査・事前打ち合わせを実施した上で、2016年1月21日には東京において国立国会図書館、東京工科大学、東京工芸大学、日本ゲーム博物館、立命館大学といった機関が参加のものと、ゲーム所蔵館連絡協議会準備会合が開催されている。

 国内連携活動としては、このような活動で国内の所蔵館が会する準備会合を開催し、参加の7機関から肯定的回答を得られたが、産業関係者や公的機関に対する調査及び招致といった、連携模索が課題として提起されている。

 海外のゲーム所蔵館連絡協議会の組織化準備業務としては、コンコーディア大学(モンとオール)、ニューヨーク大学ゲームセンター(ニューヨーク)、ストロング遊戯博物館(ロチェスター)、バーススパ大学(バーススパ)、ナショナルビデオゲームアーカイブ(ノッティンガム)、カルフォルニア大学(カルフォルニア)、スタンフォード大学図書館(カルフォルニア)、ネクソンコンピュータミュージアム(済州)といった機関に対する現地調査及び事前打ち合わせを実施したということである。このように4ヶ国8機関との意見交換を実施し、肯定的回答を得られたが、調査活動を通じて、ドイツ・ニュージーランドなど所蔵機関において、追加調査の必要性が明らかになった。また距離的な問題などから、各機関の代表者らが集まる会合の開催も課題として提起されている。

・所蔵・目録調査業務

 所蔵ならびに目録調査に関する活動としては、上述の準備活動に関連して現地の調査活動を実施するほか、国内の所蔵状況に関する質問票調査と、目録の収集と紐付けを実施したという。

 質問票調査は、デジタルゲームを所蔵・所蔵を検討している国内の図書・教育・研究機関の概況(機関数・保存状況)の把握を目的として、デジタルゲームの所蔵が見込まれる機関への郵送法により実施されており、下記の国内機関のうち、デジタルゲーム所蔵が見込まれる国公立図書館や大学図書館・専門学校・博物館などといった機関ないし、規模の大きな機関を条件に任意に選択し実施されている。対象の総数は585件であり、372件の回答があった。これは、これまで調査が行われず、明らかになってこなかったデータであるとしたうえで、本調査では一部に集中的に所蔵が存在していること、また所蔵機関数が少ないこと、さらにこれまでに発売されてきたゲームタイトル総数からすれば、所蔵数が少ないことなどが判明したという。すなわち、単一の機関が網羅的に所蔵することが困難な実態が示唆されたと論じた。但し、課題として、大学内研究組織の所蔵や中小の大学・図書館・美術館までは網羅的にフォローできていない点が課題としてあげられるという。

 また所蔵館の目録の作成・ひも付けとして、国立国会図書館、明治大学、立命館大学ゲーム研究センター、ライプツィヒ大学、ストロング遊戯博物館といった機関の目録を入手したこと、さらに合わせて15,000本以上からなる各機関の所蔵リストのうち、12,002本のリストのひも付けが完了したことが報告された。各機関の所蔵DBのリスト形式・精度は不統一であり、事前に作業完了までの工数・人月を見積もることまたマニュアル化することは難しいところであったが、施策実施のなかでの試行錯誤を通じて、DB紐付けのための方法論に進展があったと報告している。

・本事業の総括

 前述のような活動を通じて、下記のように本事業を総括している。

 本事業は、初年度の活動として実態把握に注力し、活動を展開したものであり、連絡協議会準備会合の開催や質問票調査による全体状況の把握など、とりわけ国内活動について一定の成果があったという。国内の活動進展に際する課題として、今後、連絡協議会の機能整備と多様なアクターの参画が求められるとしている。

 海外活動については、部分的な実態把握とネットワーキングの強化に成果があったものの、未調査の機関が改めて明らかになるなど、引き続き調査活動ならびに協議会組織化のための事前協議が必要であるとしている。本件については、国内機関と比較し国際機関との連携が遅れているが、これは国内機関の規模がまだ小さいことが主要因であるとして、国内の施策展開の相対的な遅れを指摘した。さらに、DBを介したひも付けなどシステム面での連携を検討する上で議論となる、仕様や方法論の標準化に関しては、所蔵数や所蔵機関整備で国内より進展がある海外との連携の重要性が、本事業を通じて再認識されたところであり、国際連携活動の更なる推進が求められるとして、報告を終えた。

・講評・質疑応答

 本報告に対して、企画委員から個人コレクターの重要性を踏まえその包括的ネットワーキングの形成のあり方について講評が述べられた。これに対して、「個人コレクターの所蔵品が重要であることは確かだが、中長期的視点に立った場合、ネットワーキングの価値と言う観点からすれば組織連携がより重要であり、そこを優先して活動を推進している。個人コレクターとのネットワーク構築はサブ戦略として進めていきたい」との応答。

 また企画委員より海外の進展を受けて、国内のネットワークのハブとなっていくアクターはどこになるかという論点を提起し、また立命館大学による活動推進における人材の安定供給の目処について講評のなかで触れた。これに対して、「海外とのネットワークのハブは立命館大学ゲーム研究センターが部分的に役割を担うところだと想定しているほか、国内連絡協議会の組織化が進展していくことで、本センターのみでない総合的な受け皿になり得るということも想定している。また安定的人材供給は極めて重大な論点であり、本事業の持続的な推進により、推進のための実務レベルでのチーム形成や連絡協議会組織化などが進展し、より安定的な推進が可能となると考えられる」と応答した。

(注1)

Lowood,H. et al. (2009). Before It’s Too Late -A Digital Game Preservation White Paper-. American Journal of Play, 2(2), pp.139-166.

【実施報告書PDF】


報告書PDFダウンロード(2MB)

本報告は、文化庁の委託業務として、メディア芸術コンソーシアムJVが実施した平成27年度「メディア芸術連携促進事業」の成果をとりまとめたものです。報告書の内容の全部又は一部については、私的使用又は引用等著作権法上認められた行為として、適宜の方法により出所を明示することにより、引用・転載複製を行うことが出来ます。