『アイザック・アシモフの科学と発見の年表』は、『われはロボット』やファウンデーションシリーズなどのSF小説で知られるアイザック・アシモフ(1920〜92年)の著書 Asimov’s Chronology of Science and Discovery(Harper and Row, 1989)の翻訳である。アシモフはSF小説だけではなく、科学、数学、歴史、文学などさまざまな分野を網羅したノンフィクションを多く発表した。とりわけ、科学解説書の著述における功績が高く評価されている。本書はそのようなアシモフの業績の集大成といえる。紀元前400万年から1992年(1989年から1992年は訳者補記)までの科学史上の出来事を各年で解説した辞典である。膨大なリサーチに基づいた解説に多彩なエピソードが加わり、読み物としても楽しめる。

本書は「二足歩行」から「持続可能な開発」まで示唆に富む1400以上のトピックをとりあげており、「科学と発見」をめぐる歴史の旅へ読者を引き込む。例えば、「コンピュータ」を引いてみると、パスカルの加算機(1642年)とライプニッツの計算機(1693年)までさかのぼりつつ、イギリスの数学者チャールズ・バベッジの計算機(1822年)にコンピュータの原型を見いだしている。さらに、アメリカの電気技術者で情報検索システム構想「メメックス(memex)」提唱者として知られるヴァネヴァー・ブッシュが制作した微分方程式を解く機械(1930年)について言及し、アラン・チューリングのチューリング・マシン(1950年)とクロード・シャノンのチェスをするコンピュータ(1950年)について第2次世界大戦や人工知能のエピソードを添えて解説している。もちろんコンピュータの歴史を詳細に記述した書籍はすでに多く見られるが、500ページにわたる本書に納められた広範な科学史を眺めることで、さまざまな出来事や人物の関係を新たに発見する作業へとつながる。

メディアアートのアーカイブをひもとけば、美術史に加え、文化史や科学技術史の観点からの検討が不可欠である。なぜなら、多くのアーティストは、最先端の科学技術に影響を受けながら表現活動をおこなっているからである。本書は、メディアアート史の研究者はもちろんのこと、メディアアーティストにもぜひ手に取ってほしい1冊だ。

アイザック・アシモフ(著)、小山慶太/輪湖博(共訳)『アイザック・アシモフの科学と発見の年表』コンパクト・サイズ、丸善、1996年

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