毎年11月の第一火曜日に開催される競馬のメルボルンカップ。オーストラリア有数の大都市、メルボルン市の郊外にあるフレミントン競馬場で開催され、オーストラリアの国民的行事となっている。この直前に同市で開催され、新たな注目を集めているのが「メルボルン国際ゲームウィーク」だ。今年もメルボルン市の肝いりで、2017年10月23日から29日まで、大小さまざまなイベントが開催され、オーストラリア全域のゲーム開発者をはじめ、さまざまな参加者でにぎわった。

GCAP2017基調講演の模様(撮影:筆者)

街中がゲームに沸く一週間

イベントのハイライトは週末に開催され、約6万人の集客で賑わうゲーム展示会「PAX AUS」だ。もっともゲーム開発者にとっては、ゲーム開発者会議の「GCAP(Game Connect Asia Pacific)」と、オーストラリアゲーム開発者アワードの発表授与式(主催は共にGDAA〈Game Developers Association of Australia〉)も目が離せないイベントとなる。今年も10月24日・25日に新メルボルン国際会議場でGCAPが開催され、約500名のゲーム開発者が参加し、さまざまな議論が行われた。

また、2017年10月25日には市郊外のレストランで、オーストラリアゲーム開発者アワードの発表授与式も開催された。年間で最高のタイトルを表彰するゲームオブザイヤー部門では、NASAの協力で開発されたVRゲームで、国際宇宙ステーションでの船外活動体験ができる『EARTHLIGHT』(Opaque Space)と、テーブル上のカードをマップに見立てて冒険を繰り広げるデジタルボードゲーム『Hand of Fate 2』(Defiant Development)の2作が輝いた。またOpaque Spaceは年間最優秀スタジオ部門も受賞した。

受賞にわくOpaque Spaceのメンバー(撮影:筆者)
EARTHLIGHT
写真提供:Opaque Space
Hand of Fate 2
写真提供:Defiant Development

州政府が産業育成を強力に支援

アメリカやカナダなどと同じく連邦制を取るオーストラリアでは、首都キャンベラと経済の中心地シドニー以外にも、アデレード、ブリスベン、パースなど、各々の州都を中心に地方分権が進んでいる。中でもメルボルンを州都とするヴィクトリア州でゲームやコンテンツ産業の振興策が積極的に採られているのは、オーストラリアの中でも数少ない、地下資源に乏しいエリアだという事情がある。特に近年ではインディ(独立系)ゲーム会社に対する支援が手厚く、産業の集積化が進んでいる。

産業支援の一環として2013年に設立され、GDAAの肝いりで運営されている施設が、インディゲーム開発者向けのコワーキングスペース「THE ARCADE」だ。2017年10月26日には入居企業が開発中のゲームをデモ展示する「Pre-PAX Arcade Open Day」イベントが開催され、ゲーム開発者や地元メディアなどでにぎわった。一世を風靡したスマートフォン向けカジュアルゲーム『Crossy Road』(Hipster Whale)など、数多くのヒット作が本施設から登場している。

「Pre-PAX Arcade Open Day」の模様(撮影:筆者)

日本やアメリカなどと同じく、オーストラリアでも1980年代にゲーム開発が始まり、2000年代には欧米の大手パブリッシャーによる企業買収が進んだ。しかし、2008年のリーマンショックで撤退が相次ぎ、業界が一気に縮小する。そこから続々とスタートアップが登場し、業界の支援も受けつつ、新たな産業へと成長してきた。メルボルン王立工科大学をはじめ、工学系・芸術系の学術機関も多く、産学官連携のモデル地区だと言える。

もっとも、日本企業の動きは冴えない。スマートフォンゲーム大手のグリーは現地企業を買収し、2015年にグリーメルボルンを立ち上げたが、2017年に撤退した。他に任天堂オーストラリアがメルボルンに販売拠点をかまえる程度で、ゲーム開発における協業事例は乏しい。その一方で、VRアトラクション開発を行うZERO LATENCY社が開発した『ZERO LATENCY VR』が、お台場の商業施設・東京ジョイポリスで2016年にサービスを開始するなど、徐々に風向きも変わってきた。

人口が約2,400万人で、約1,300億円のゲーム市場を持つオーストラリアは、カナダなどと並んでゲームのテストマーケティングに最適な市場だとされる。また、スマートフォンを中心に、多くのオーストラリア産ゲームが日本ですでにプレイされており、その数はますます増加すると考えられる。欧米企業と異なり、日本との時差が少ないのもメリットだ。ゲーム産業クラスターとしても、日本企業との関係性という意味でも、さまざまな可能性が感じられた今年のメルボルン国際ゲームウィークだった。


(information)
Game Connect Asia Pacific 2017
日時:2017年10月24日(火)〜25日(水)
会場:Melbourne Convention and Exhibition Centre
主催:Game Developers’ Association of Australia