共創プラットフォーム研究会は「共創プラットフォーム(Co-Creation Platform)」をテーマとするオープンな研究会である。中心メンバーは、江渡浩一郎氏(産業技術総合研究所、ニコニコ学会β実行委員長)と木原民雄氏(メディアアーティスト、昭和女子大学)。研究会はすでに2回実施されており、これからも2014年12月まで、毎月都内で開催される予定だ(詳細はFacebookを参照されたい)。

第1回は濱野智史氏(情報環境研究者、アイドルプロデューサー)と中西泰人氏(慶應義塾大学)、第2回は、かすやきょうこ氏(テクノ手芸部、株式会社オブシープ)と市原えつこ氏(UIデザイナー/アーティスト)がゲストとして参加した。

第1回で、濱野氏はアイドルグループと共創について発表した。AKB48について、2ちゃんねるのユーザの反応をプロデュースに取り入れていった点に特徴があると指摘し、自身が手がけるPIPというアイドルグループのコンセプトを説明した。中西氏はスタンフォード大学のd.schoolに研究滞在した経験をもとに、情報デザインと空間デザインの両方を統合する共創プラットフォームとしてのチームスポーツについて発表した。第2回で、かすやきょうこ氏は、よしだともふみ氏と2008年に結成したテクノ手芸部の活動とよしだ氏とのコラボレーションを紹介し、テクノ手芸を様々な人に広めるための工夫について発表した。市原氏は《セクハラ・インターフェイス》をはじめとする自身の作品紹介をしたうえで、共同制作者である渡井大己氏とのコラボレーションについてプレゼンテーションを行った。また、かすや氏は近頃会社を起業しており、市原氏はIT企業に勤めつつ作品制作を続けていることから、両者の制作スタイルや、女性として働くことについても議論が広がった。それぞれのプレゼンテーションの後には、参加者による活発なディスカッションが行われた。

「共創(Co-Creation)」という言葉はビジネス用語として知られている。企業と顧客の関係を、従来のように生産者と消費者という非対称的なものと捉えるのではなく、共通の価値を実現する互恵的パートナーとするような考え方である。これは、2005年にティム・オライリー氏(Tim O’Reilly)が提唱したWeb 2.0や、近年、CGM(Consumer Generated Media)やUGC(User Generated Content)と呼ばれるユーザ参加型のビジネスの潮流とも深い関連を持っている(身近な例としては、WikipediaやSNS、動画共有サイトが挙げられる)。このようなサービスでは、ユーザの創造力を他のユーザやコミュニティに波及させる「創造の連鎖」を生み出せるかどうかが成功の鍵とされる。このような議論はアートの世界に敷衍して考えることもできるだろう。実際、観客の参加性やユニットやグループでの共同制作がメディアアートの特徴として挙げられることは少なくない。

ローレンス・レッシグ氏(Lawrence Lessig)に端を発するアーキテクチャ論(アーキテクチャという言葉を、建築やコンピュータのハードウェアやソフトウェアだけでなく、組織や社会に敷衍して論じる議論)が「情報社会における権力、統治、管理、統制の新しい形」といった方向で展開されたのに対し、「共創のためのプラットフォームをつくる」というコンセプトは「創造」に焦点をあてている。「共創プラットフォーム」をめぐる議論は、今後アーキテクチャ論を補完する形で、メディアアートの重要な論点の一つになるのではないだろうか。

第1回共創プラットフォーム研究会
https://www.facebook.com/events/327517114072677/
第2回共創プラットフォーム研究会
https://www.facebook.com/events/333560010128393/