2014年9月2日から7日にかけて、スイス・バーデンにて第12回ファントーシュ国際アニメーション映画祭が行われた。1995年に第1回が開催されたファントーシュはアニメーション専門映画祭としてはスイス最大で、延べ3万人を超える来場者を集めるなど、日本の広島国際アニメーションフェスティバルと規模的に同程度のものである。短編のみを対象としたコンペティションには、グランプリにあたるBest Filmに並んでハイリスク賞という独自の賞が設けられており、革新的な表現を積極的に評価しようとする映画祭として知られている。

ファントーシュでは毎年ひとつの国にフォーカスをあてた特集を組むが、今年は日本・スイス国交樹立150周年ということもあり、日本がその対象となった。筆者はそのキュレーターとして映画祭に招かれたので、現地のレポートを兼ねた報告を行いたい。

日本特集は「What’s Going On, Japan?」というタイトルで、主に日本のインディペンデント分野における近年の達成にフォーカスをあてつつ、歴史的に広く受け入れられた商業作品も上映した。近年、日本人作家がどのような想像力とともにアニメーションを作っているのか、非社会性をキーワードとして短編作品を集めるとともに、日本人のベーシックな想像力を形成したと考えられるような著名なアニメーション作品も紹介するという構成をとった。アニメーションが作り出す想像力と、アニメーションによって作り出される想像力の両方を取り上げることによって、アニメーションを通じて、日本のリアリティを浮かび上がらせることを意図したものである。

短編作品は、非社会性、少女、震災や原発をめぐる想像力、歴史の再発見という4つのトピックで上映プログラムが組まれ、また、世界的な活躍を見せるアニメーション作家和田淳氏の回顧上映も本人のトーク付きで行われた。文化庁メディア芸術祭とのコラボレーション・プログラムでは、アニメーション作家の古川タク氏が登壇し、日本のインディペンデント・アニメーション史における重要な瞬間を、目撃者という立場から語った。

また、スタジオ・プレゼンテーションでは、国際的に活躍の場を広げつつある湯浅政明氏が自らの経歴を振り返るとともに、2013年に氏が立ち上げたサイエンスSARUというスタジオについての紹介を行った。長編紹介プログラムでは『AKIRA』や『風の谷のナウシカ』といったカタストロフィをテーマに組みこんだ作品と並んで、『風立ちぬ』『かぐや姫の物語』という日本社会の現代の考察とも読めるスタジオ・ジブリの二作品も上映された。

学校紹介プログラムでは多摩美術大学のアニメーションが、卒業生であるアニメーション作家水江未来氏の紹介のもと、著名なグラフィック・デザイン学科の達成のみならず、同大学で作られたアニメーション作品が学科の枠を超えて包括的に上映された。展示ではひらのりょう氏による新作インスタレーション「TEETH」や、若手女性アニメーション作家3人(中内友紀恵氏、若井麻奈美氏、いよりさき氏)が運営する展示&販売プロジェクト「ANIME SAKKA ZAKKA」が多くの人を集めた。

日本作品はコンペティション部門でも存在感を発揮した。水江未来氏の『WONDER』(2014年)がBest Visual賞を、水尻自子氏の『かまくら』(2013年)がBest Sound賞を受賞した。水尻氏は昨年の同映画祭でも『布団』でハイリスク賞を受賞しており、二年連続受賞の快挙となった。

Best Filmには、広島でのグランプリに続きイギリスの学生作品『ザ・ビガー・ピクチャー』(デイジー・ジェイコブス監督)が選ばれた。ハイリスク賞は、精神科医とその患者、そして母親の3人の視点が異なる三つのウィンドウで同時に描かれる『スルー・ザ・ホーソーン(Through the Hawthorn)』(アンナ・ベナー、ピア・ボルグ、ジェマ・バーディット監督)が受賞した。同作はドイツ最大のシュトゥットガルト国際アニメーション映画祭でもグランプリを受賞しており、両作品とも、今年を代表する作品であることを印象づけた。

来年のファントーシュは9月1日から6日かけて開催され、ポーランドの特集が行われる。

ファントーシュ国際アニメーション映画祭公式ホームページ
http://fantoche.ch/