川崎市市民ミュージアムでは展覧会「スタジオ・アッズーロ展—KATARIBE」展が2012年9月22日にオープンし、展覧会初日に、オープニング・トークとしてスタジオ・アッズーロの主要メンバーの一人、パオロ・ローザ氏(1949年−、イタリア)と横山正氏(東京大学名誉教授、情報科学芸術大学院大学名誉教授)の対談が行われた。

オープニング・トークでは、最初にローザ氏が、30周年を迎えたスタジオ・アッズーロ(ミラノ、イタリア)の活動を大きく3つの時期に区切ってプレゼンテーションを行った。まず、1982年から始まる第1期「ビデオ・エンバイラメント(環境ビデオ)」、次に、1990年代半ばから始まる第2期「センシティブ・エンバイラメント(鋭敏な環境)」、そして、近年取り組むフィールドワークともいえる「語り部」シリーズについて、代表する作品の映像と技術的/社会的背景を織り交ぜながら解説した。

横山氏は彼らの多様な活動のテーマには一貫して人間への根源的な敬愛が見られ、人間の自然な行為によるインタラクションが特徴的であることを指摘した。また、スタジオ・アッズーロがアート・マーケットに対するある種の攻防として、少人数の職人工房的な「ピッコロ・ファミリア(小さな家族)」というスタイルをとり、プロセスを共有しながら作品を制作する「複数形のアーティスト」という考え方に基づいて活動することについて議論された。その延長上で、ローザ氏とアンドレア・バルツォラ氏(脚本家/演劇論、1961年−、イタリア)の共著『L’arte fuori di sé: Un manifesto per l’età post-tecnologica(芸術は自己の外へポスト・テクノロジー時代のマニフェスト)』(2011年、Feltrinelli)についても触れ、困難を抱える時代においてアートが単なるお飾り的なものになっている状況に対して、スタジオ・アッズーロは社会への「抗体」としてのアートを提案し、人々が関係性を築くプロセスにおいて作品が形成されることを実践している、と語った。それは、見えないルールに縛られて表現の自由度が拘束されているのではないかという疑念であると同時に、ミュージアム・システムに対するアンチテーゼでもある。また、「技術への欲望の変化」についても言及し、ひたすら技術を追いかけてきた時代を経て、技術をどのように使えばよいかという時代に展開されるべきアートについて考えていきたいと述べた。

展覧会では、スタジオ・アッズーロが近年展開する「語り部」シリーズを中心に、第1期の代表作の一つである《泳ぐ人(ハイデルベルグに通い詰めて)》(1984年、*本展覧会では規模を縮小して展示)や、子供へ向けた作品《水たまり(子供たちに捧げられた微笑の風景)》(2006年)が展示される。また、アーカイブ資料のコーナーが設けられており、彼らの30年間の歩みを振り返ることができる。2012年11月4日まで開催。

川崎市市民ミュージアム「スタジオ・アッズーロ展—KATARIBE」展
http://www.kawasaki-museum.jp/azzurro/index.html