以前にお伝えしたこともある「さいたま市立漫画会館」で2014年9月6日から11月24日にかけて、「〜少女漫画からレディースコミックへ〜牧美也子の世界展」が開催されている。

牧美也子氏は、1935年神戸市生まれ。氏が高校生になる頃、家族は大阪の松屋町(まっちゃまち)に引越し、本の卸問屋を始めた。松屋町と言えば、戦後の日本マンガを語るうえで欠かせない「赤本」を発行していた街だ。また「赤本」の後に流行したいわゆる「貸本」も、関西から出てきたことはよく知られている。

実際、貸本の流行によって忙しくなった家業を手伝うため、牧氏は就職した銀行を辞めることになる。そして店先に山と積まれた貸本を見て、マンガを描くことを思い立ったそうだ。

貸本マンガの出版元として有名な東光堂が実家の近所にあり、そこに原稿を持ち込んだ牧氏は『母恋ワルツ』で1957年にデビュー。以後、まだ男性の描き手が多かった少女向けマンガの世界で、わたなべまさこ氏や水野英子氏と共に、月刊誌時代の少女マンガ界を牽引していく作家となる。

そして少年マンガが青年化していった1960年代末、牧氏は少女マンガの青年化であり、後にレディース・コミックや女性マンガとも呼ばれるジャンルを、率先して開拓していくことになる。

今回の展示は、それほど広いスペースではないものの、牧氏の作品を「I.少女漫画」「II.レディースコミック」という時代区分に沿って、当時の雑誌や付録、原画を使って紹介するもの。『赤いろうそくと人魚』や『愛……そしてパリ』などの白黒原稿、『マキの口笛』や雑誌「なかよし」の表紙に使われたカラー原稿などが展示され、「リカちゃん人形」のモデルとなった佳麗な絵柄から、女性マンガ時代の妖艶な画風まで、その時代の変遷をじっくりと堪能できるようになっている。

先日紹介した「わたしのマーガレット展」で扱われていた「週刊マーガレット」が創刊される以前の月刊誌時代の少女マンガを知るために、そして華やかな少女マンガと同時並行的に存在していたはずの女性マンガについて補完するためにも、牧氏の足跡はきわめて重要だろう。

企画漫画展「〜少女漫画からレディースコミックへ〜牧美也子の世界展」
http://www.city.saitama.jp/004/001/002/005/kita/p036862.html