2015年1月5日に、武蔵野美術大学にて「現代アートとアクティビズム〜全体主義国家の現場から」というタイトルの講演会が開かれた。ビデオアートを中心とする日本の映像芸術の研究でも知られるアーティスト、クリストフ・シャルル 教授による企画だった。

講師は、1980年代に日本のビデオアートを支えたビデオギャラリーSCAN(代表:中谷芙二子氏)のディレクターとキュレータを務めた清恵子氏。1980年に設立されたビデオギャラリーSCANは、ギャラリーの命名者でもあるビル・ヴィオラ氏などの世界的なアーティストを日本に招聘して海外の最新動向をいち早く紹介し、年2回の新作公募展を開催するほか、家電企業と放送局の支援を得た「ビデオ・テレビジョン・フェスティバル」開催(1987年、1989年、1992年)を通してビデオアートの新しい活路を模索した。若い世代に重要な発表の場として機能したビデオギャラリーSCANで輩出されたアーティストの多数は、現在全国の大学で次世代の教育に携わっている。

冷戦の象徴となったベルリンの壁崩落の1年前である1988年、共産主義国家の状況を研究する目的に東欧に移住した清氏は、革命の真只中、現地のアクティビスト、アーティスト、市民と連携して、メディアとアートによる民主活動を開始した。そして東欧の民主化以後には「The Age of Nikola Tesla」(オスナブリュック、ドイツ、1991)、「EX-ORIENTE-LUX-Romanian Video Week」(ブカレスト、ルーマニア、1993)、「Orbis Fictus – New Media in Contemporary Arts」(プラハ、チェコ、1995)、「POLITIK-UM/New Engagement」(プラハ城、チェコ、2002)などのプロジェクトのキュレーション、メディアアートの研究教育と出版活動に携わってきた。その実践的な活動の中で清氏がコレクションした映像アーカイブは、1999年、ウィーンのGenerali Foundationのパーマネントコレクションとして公開され、ドイツのマスメディアによって「個人所蔵の革命的ビデオ・コレクションとしては最大の規模」と報道された。

2015年1月19日18時30分より東京藝術大学上野キャンパス中央棟第1講義室にて、清氏の講演会「メディア_アート_アクティビズム|全体主義の現場から」が開催される(事前登録無・一般公開)。上記の映像資料の一部をはじめ、2002年にミャンマーとタイに拠点を移した後、Myanmar Moving Image Centerを設立し、東欧とはまた異なる政治的状況と制約の中で清氏の取り組んだ近年の活動までをうかがえる貴重な機会である。情報メディアに対するリテラシーはいかにアートに接続され、さらに歴史と社会現実に働きかけるのだろうか。その可能性について考察する時間になることを期待する。

清恵子氏の講演会「メディア_アート_アクティビズム|全体主義の現場から」
http://geidai-ram.jp/event/2015/id_63/